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【初心者向き】ロングライド 補給食の目安量を考える

 

 

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センチュリーライドやグランフォンド、ツールド○○といった、よくみかけるイベントの走行距離150km以上をターゲットに考察してみます。

イベントや練習の際、何をどう摂取したらいいか悩んでいる方は、こういったやり方もあるんだなー程度に参考にしてみてください。

  

 

身体のエネルギー源

貯蔵糖質を枯渇しないように走ることが重要 

人体はATPという高エネルギー物質を体内で作り、筋肉などを動かしています。

 

ATPは糖質以外にも、脂質、タンパク質、様々な仕組みで作られていますが、糖質は素早くエネルギーにできるように生体内で専用回路が設けられています(解糖系と言います)。また臓器への負担が少なかったり、高いパフォーマンスを発揮できたりと、どんなスポーツにおいても、糖質は必要不可欠なエネルギー源になります。

 

人間は糖質をグリコーゲンという形で貯蔵しています。

★体内のグリコーゲン貯蔵量

肝臓・・・100g

筋肉中・・・300g

合計400g(1600kcal分

 

意外と多いな、と思いましたか?

走り方と身体状況にもよると思いますが、1時間に300〜500kcalは消費されるので、だいたい4時間くらいは貯蔵量で走れる計算です。

 

しかし、貯蔵糖質が枯渇してしまった場合、脳まで栄養が不足してしまいます。

その結果、中枢性疲労を発症します。

中枢性疲労は、めまい、吐き気、だるさなどの症状で、いわゆるハンガーノックと言われているものです。

また筋疲労も同時に起こし、活動筋にダメージが入る、リスタートしても「脚が攣りやすい、普段以上に力がでない」など、完走を妨げる原因となってしまいます。

 

カーボローディングをしておく

糖質貯蔵量は400gと言いましたが、それは日々の利用率から見た平均です。実際は約1.25倍ほどあると推測されます。

 

 貯蔵糖質は多ければ多いほど、走行中の負担を減らすことができます。できる限り貯蔵糖質を増やしておくことが理想です。

そこで、カーボローディングと言われる貯蔵糖質を増やすテクニックを活用します。

 

 主に「古典法」、「最新法」と2種類あるので、図で表します。 

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最新法の方が効果があるとされていますが、古典法ユーザーの方もまだたくさんいらっしゃいます。

○前日に高糖質•低脂質食
○運動量はウォーミングアップ程度に抑える

どちらのやり方も、上記のポイントは共通しているので、イベント間近の食生活を意識するだけでも効果はあると思います。 

 

少量で高エネルギーな脂質

脂質は1gあたり9kcalと高く、少量で多くのエネルギーを確保できます。そして体脂肪として豊富に貯蔵されているので、相当なカロリーを保有しています。

貯蔵脂質は遊離脂肪酸(血中に流れ出る脂質)として、糖質と同じようにエネルギーとして生体内で利用されます。ただそれは副業的な役割で、本職はホルモンをつくったり、体調を一定に保ったりと、ホメオスタシス制御(体調を一定に保とうとすること)に重要な役割を担ってます。

(ちなみに糖質も、分解の過程で余剰したグルコース、ピルビン酸、乳酸、アセチルCoAなどを脂肪酸を生合成する働きをもっています。)

 

そして、運動における脂質の役割は、

有酸素運動のような負荷が少ない時(乳酸閾値LTが低い)

○貯蔵糖質が不足した時

といったシーンで血中に放出され、ATPになってエネルギーとして働きます。

 

では、「脂質もエネルギーになるし、こまめに糖質とらなくてもよいのでは?」と思いますよね、

体内で吸収するためには、分解するために乳化したり、糖質に比べてプロセスが複雑で、消化器官の負担も大きいです。ですので、前日近くからは極力控えた方が良いでしょう。

補給は適材適

ベースとなる栄養

A.グルコース+フルクトース

まず、フルクトースって何?という話ですが、これは一般的なグルコースと同じく、単糖類の一種です(これ以上分解されない状態)。果物に主に含まれるため果糖とも言います。

糖質はまず、唾液で分解されて食道を通り、最終的に小腸で吸収されますが、グルコースとフルクトースは専用の吸収経路が別々に用意されています。

 吸収量
グルコース 1.0g/分 1時間で240kcal
○フルクトース 0.5g/分 1時間で120kcal

ですので、グルコースのみより多く吸収可能です。また、フルクトースはインスリンの分泌に影響されにくいとされています。

 

すでにグルコースとフルクトースが一緒になっているものに、はちみつ、ブドウ糖果糖液糖※があります。

ブドウ糖果糖液糖は加工が難しい為、それだけで市販されていることはめったにないです。ですが、入っていないものを探す方が難しいほど、多くの製品に入っていると思います。

A.MCT

MCTとは中鎖脂肪酸(中くらいの鎖で繋がれた脂肪)の略で脂質の一種です。普段使うサラダ油などは長鎖脂肪酸となります。

脂質は内臓負担がかかるため控えた方が良いと話ましたが、MCTは体内の分解吸収がスムーズで素早くエネルギーに利用されるため別腹です。

しかも飲料や補給食に加えても、味覚の変化が少なく、違和感なく摂取でき、温度による形状変化もありません。

(1)中鎖脂肪酸は、リパーゼで分解され易く食物中の中鎖脂肪酸は胃の中でほとんどが脂肪酸グリセリンに分解された状態になる。
(2)中鎖脂肪酸は、長鎖脂肪酸と異なり完全に脂肪酸グリセリンに分解される。
(3)中鎖脂肪酸は、大部分が小腸絨毛の血管から吸収され、門脈を通じて肝臓へと運ばれ、すぐに エネルギー化される。そのため体脂肪としても蓄積されにくい。
長鎖脂肪酸はリンパ管経由で吸収され、鎖骨下静脈から血管内に入り、それから全身へと運ばれる。

引用元:アルフレッサ様油脂・MCT(中鎖脂肪酸)について|エイヨウショクヒン.コム

B.水分、電解質

ロードバイクにおける水分管理は難しいです。グリコーゲンは水分を誘引しているので、長時間にわたりエネルギーを消費しつづけるロングライドは、隠れ脱水になりやすいです。

体重の減少率が体重の2%(例:体重が60kgの場合、1.2kg)を超えると、集中力の低下、スキルレベルの低下、心拍数や体温の過度な上昇等が起こります。したがって、パフォーマンスを維持するためには、体重の減少率が体重の1%以内に収まるよう、十分な水分補給を行う

引用元:「パフォーマンスに差を生み出す水分補給作戦」

|Athlete Pathway アスリート育成パスウェイ

脱水することにより血液が濃く少なくなるので、

・心臓から出る一回拍出量が低下

・心拍数上昇

・酸素消費量が増加

→ 肺活筋活動量増加によりエネルギー消費量増

→ 酸素を使うコスパの良い電子伝達系のATP供給機構への影響

そして、上記以外にも脱水による影響は数多くパフォーマンス低下は否めません。

 

パフォーマンスが落ちるのと同時に喉が渇き始めるのも自覚すると言われています。しかし高齢になるほど、脳の口渇中枢が衰えてくるため喉は渇きにくく感じます。また精神状態によっても感じ方が変わるので、自分の喉の渇きは信じすぎない方が良いでしょう。

 

塩分も非常に大切です。

人間の身体は、一定の浸透圧に保とうとする働きがあります。様々な水分をとっても最適な濃度に調整し、体水分を確保します。ただ真水をとりすぎてしまった場合、体液が薄まりすぎてphが変動しまうため、取り込んだ水分を排出しようとします。

飲んだつもりが吸収されていなく、結果的に脱水となる、自発的脱水が起こります。

ですので、水1ℓに対しては塩分3gほど加えると、体液に近く吸収も素早い濃度になります。手軽さで言えば塩飴・タブレットもおすすめです。

 

水分摂取量としては、運動前と運動後に体重計測し、変動した体重の1.5倍量水分摂取するのが望ましいとされています。しかし、環境的要因が多い自転車の場合、実体験をベースに普段飲んでる量をベースに考えた方が良いでしょう。

1時間あたり750〜1000ml、そして自発的脱水を防ぐためにも、20分置きにこまめに摂取するのが望ましいです。

 

組み立てる

「A.エネルギー源」最後まで走りきるため

「B.電解質補給」恒常性を維持し、パフォーマンスを継続させるため

この2種類をベースに、嗜好を加味しながら考えると良いと思います。

 

ライドスタイルにも寄りますが、

補給をあらかじめ携帯し、足りなくなったら購入

といった方が大半かと思います。

 

参考例)Ave25km,総距離200km/8時間

170cm 65kg

体脂肪15% 


○750mlのボトル(糖質濃度6.6%)

・水 750ml

・はちみつ 25g(100kcal)

・マルトデキストリン 35g(140kcal) 

・塩分 3g 

○はちみつチューブ(追加用)

○マルトデキストリン小袋(追加用)

○携帯食(2時間置きに補給)300kcal

エナジージェル、ようかん、グミなど

・ボトルを消費しおわった場合、コンビニ等で水を購入して作る。

・休憩に入ったら早めに固形物を摂取しておくと、胃への負担も軽減され、徐々に吸収されるためハンガーノック対策によいと思います。

・目的距離の終盤は20km、30km毎に休憩はこまかく取った方が翌日以降の筋肉へのダメージも軽減されます。

 

距離に応じて補給量や休憩時間を調整すれば400km、600kmも可能だと思います。

時間を気にしながら走るのは完走したことのある距離で。また複数人で走る時は、自己管理を他人任せにせず、自分の事は自分が一番詳しいと思う事が大切です。

 

必要に応じて

エルゴジェニックフード

おもにパフォーマンスを上げる効果のあるサプリメントや食品のことを言います。

脂質代謝を上げるカルニチン、抑制性神経伝達物質を防ぎ集中力を高めるカフェインなど様々なものがありますが、その中でもクレアチンとBCAAがおすすめです。

クレアチン

ここぞというときにはクレアチンです。

ATPには主に3つの供給機構があります。

その中で、供給速度が最速、爆発的なパワーを放出するATP-PCr系。クレアチンリン酸が無機リン酸とクレアチンに分解される際にATPを合成するエネルギーが発生されます。クレアチンを摂取することにより、素早く供給回路を回すことができます。必殺技ゲージが即チャージです。

ヒルクライム区間や、幹線道路など気合を入れなければいけないシュチュの前に摂取しておくと、パフォーマンス向上が望めると思います。

BCAA

運動時のBCAA摂取に期待される効果

筋肉

  • 筋タンパク質合成促進
  • 筋タンパク質分解抑制
  • 筋損傷軽減

持久運動能力

筋繊維のグリコーゲンが枯渇し、疲労蓄積が起こる前から摂取していることが望ましく、またレース後にもプロテイン+BCAAを摂取することにより、筋繊維回復が早まるとされています。

イベント後

補給を忘れずに 

糖質

筋グリコーゲンを使い果たしているため、補充しない状態が続くと、筋繊維を分解し始めます。そしてアミノ酸として血糖維持やエネルギーとして利用しようとします。

そのため筋肉を守るためにも、すぐに糖質を摂取したほうがいいでしょう。

ただ摂りすぎても吸収されず、インスリンも必要以上に出てしまうため、、300kcal程度で十分です。

 

タンパク質(プロテイン

筋繊維は広範囲にダメージを負っているため、修復する必要があります。

糖質が吸収されるタイミングで、インスリンが一緒に栄養素を筋肉へ運んでくれるため、早めの摂取が望ましいです。

ネットバランスをいかに縮め、プラスにもっていけるかがカギとなります。

 

ネットバランス・・・筋肉における合成量を分解量で引いた数値のこと。

覚えておくといいこと

吸収限界

エネルギーになる糖質ですが、吸収量は1時間あたり90gが限界と言われています(360kcal分)。

MCTを併用しながら、無駄のない補給が重要です。

 

マウスリンス

運動中、口内に糖質飲料を含むだけで、持久系パフォーマンスがあがるとされています。脳のエネルギー補給も行え、ハンガーノック防止になります。